第1章 闇の鼓動。

    1-1 悪夢と翡翠

    うなされるように、滅びゆく時代の悪夢を最近良くみるようになった。

    朝起きるとビッショリの汗と激しい動悸に、気分の悪い目覚め。

    段々と同じ夢をみる頻度が多くなってきた。

    パッと時計を見ると、いつもより30分遅れて目覚め、慌てて準備を始めた。

    陽介「あの悪夢は何なんだろう。なんとなく昔ばぁちゃんと、よく行った神社に似てるんだよなー。次の休みに、夢に出た神社に行って、色々と確かめてみるか。」

    陽介「やばい遅刻だ!急がないと!」

    そそくさと陽介は仕事場に急いだ。

    主人公の陽介が見ていた悪夢、それは過去に起こった壮絶な闘いの断片であった、、、。

    始まりは300年前、人間と魔物の戦いが歴史上の影で行われていた。

    魔物の長、その名をガシャという。最高封印術、「羅生門」なる術により、ガシャを封印した巫女、

    那月(なづき)との、血生臭い戦いであった。

    ガシャは人間の恐怖や憎しみを糧に生きている不死身の身体である為、巫女はマガダマに自らの魂を注ぎ、

    2度と災いが起こらないようにと大きな岩に封印し物語の幕は閉じたのであった。

    その後、300年後の現代で、ある事件が起きる。

    魔物を封じ込めた、大きな岩が真っ二つに割れ、ガシャの封印が何者かの手により解かれた。

    封印を解かれた魔物の王は、封印を解いた謎の男と共に、人間に復讐せんと着々と憎悪を滾らせ、

    密かに闇に消えていくのであった。

    その一方で、現代、2030年8月、蜩(ひぐらし)の鳴く、夏も終わりに近づいた頃、

    この物語の主人公、神城陽介(かみき ようすけ)は高尾山に居た。

    悪夢に出た神社に行く為、山を登り中間地点で腰を下ろした。

    夏の緑葉の香りにホッとひと息をつき、陽介は、ふと大きな杉の木を眺めて思い出に耽(ふけ)っていた。

    すると杉の木のテッペン辺りにキノコのような長く赤い物が見えた。陽介は付けてた眼鏡を汗だくのTシャツで拭き、

    もう一度、目を凝らして、よーく見てみた。

    すると、次はハッキリと、それを捉えた。

    陽介「あれ?あれは良くみると鴉天狗じゃないか?」

    陽介「木に彫ってあるのかな、珍しいなー。」

    すると彫り物だと思っていた鴉天狗が、こちらをジロっと睨みつけた。

    陽介は、ビックリした面持ちで、たちまち大声で「うわーー!!!」っと椅子から後ろに転げ落ちた。

    陽介は、頭を押さえながら、イテテっと起き上がり、もう一度、杉の木を見上げると、鴉天狗は居なくなっていた。

    怖くなった陽介は、その場を走り去り神社まで先を急いだ。

    陽介「ハァーッハァーッ、もう、そろそろかな。」

    山を登り、一時が経った頃、霧が立ち込めてきた。

    焦って先を急いだ陽介は立ち入り禁止の道に迷い込んでしまった。

    霧の中歩いていると、何かに陽介がぶつかった。

    そこには20メートルは、あろうか縦に割れた巨大な石の塊を見つけた。

    おどろおどろしい空気感に恐がりながら、先を急ごうとすると、

    陽介は、石につまずき、転げてメガネが外れた。

    メガネを探すため、当たりを探ると10センチくらいの翡翠の勾玉を見つけた。

    慌てて眼鏡を手に見てみると、その神秘的で綺麗な石に息をのんだ。

    陽介は、その勾玉を持って帰ることにした。

    程なくして霧が晴れ、お目当ての神社に行きついたのであった。

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